衛星班研究会
2009年4月7日〜8日
名古屋大学 地球水循環研究センター

4月7日 自己紹介

藤田耕史@名大 趣旨説明

<現状>
現在JICA内で本計画に向け調整中/ルルナでUNDPが300人規模の水抜き工事を実施/危ないといわれる氷河湖の危険度再評価/予想される被害をハザードマップとして公開/衛星資産データのオルソ補正/ASTERで絞り込み,ALOSで精査/GLOFを経験した氷河湖の地形復元/CORONAを利用して元の状態を推定可能か?/発生時期、拡大速度などの基本となるデータとして包括的なデータベースを公開へ

<本研究会の趣旨>
氷河湖の抽出方法について議論/その役割分担


藤田耕史@名大 ASTER-NDWIによる氷河湖面抽出とその問題点

<イムジャNDWIの例>
NDWIの長所:雲はある程度除去できる/NDWIの短所:氷はマニュアル修正が必要/マニュアルは面積を少なく見積もる傾向/2002の現地測量結果とおおむね一致/NDWIは有効

<イムジャ氷河湖の近況>
拡大速度は低下/岩田)見積もりの誤差はどれくらいの影響があるか?/藤田)湖全面積の2−3%/山之口)MIRは色の違いにも強い。大気補正処理でより改善する/田殿)標高が十分高いので影響はあまり考えられないが、反射率に直したほうが良いかも

<今後の解析>
ASTER-DEMを使用する/岩田)上流の危険要素も考慮すべき/藤田)傾斜角10度はあまり根拠の無い値。GLOF後の湖についてDEM復元することにより、明確な数値がわかるかも。/岩田)痕跡の調査をGLOF事例として扱いたい/山口)ICIMODが危険な氷河湖を選択する評価方法はどうか?/藤田)主観的。大きさ、氷河との接点など。UNDPの氷河湖はノーマークであり、岩田さんの報告による/竹中)岩田さんが危険といった理由は何か?/岩田)氷河に接し、比高、傾斜、侵食状況などがフィールドで危険そうだと判断した

<検討事項>
位置あわせ/分担スケジュール/それぞれのコミット量


奈良間千之@地球研 氷河湖の自動抽出の問題点

<湖色について>
ASTER vs. Landsatを検討/濁度の変遷/NDVIでは透明度の高い湖を捉えられない/Lansat, ASTERであまり差はない(2001)/拡大速度:閾値によって異なる値を示す。

<問題点>
雪に覆われた部分は湖として認識されない/小さい池はASTERでは認識可能

<まとめ>
氷河湖の抽出にはLandsatETMの比演算(4-2)/(4+2)またはASTER(3-1)/(3+1)が良い。精度はおおむね同じくらい。/ASTERでは氷河湖面積がある程度小さくても抽出可能/Landsatは経年観測に強い

奈良間)良いシーンのセレクトには2年分くらいの蓄積が必要。それらでクロスチェックすれば正確だろう。/岩田)キルギス調査時の台帳はあるか?/奈良間)作ったが清書せず。履歴調査にLandsatは有効/岩田)チベット側の台帳はないか?/藤田)ある。ただし座標記載なし。相対位置は何とか把握可能。


田殿武雄@JAXA ALOS/PRISMによる地形抽出と氷河湖観測−ASTER GDEM との比較

杉山)ASTER_DEMの精度が場所によって異なるのはなぜか?/田殿)相関の良し悪しによるが、似たような模様が多いと精度が低下する。山で隠れている部分も同様。PRIZMは3個のセンサによるのでよりよい精度

西村)欠損箇所は3年以内に新規取得できるか?/田殿)雲の状況により可能

奈良間)パンシャープンで自動抽出可能か?/田殿)可能だが物理量としては異なる種類のデータとなる。見た目は鮮明になる

藤田)ALOS画像が十分得られれば基準的なデータベースとして用いたい/田殿)雲を除外していく作業が必要。使えるところは使っていく予定

岩田)ハザード対策のためコンターマップは不可欠。精度はどうか?/田殿)5m分解能PRIZMの場合、1/2.5万は可能。精度が許せば橋などにも対応できる


山之口勤@RESTEC 氷河湖湖面面積の抽出とその前処理−RESTECの事例

年代別の衛星画像に見えるルナナ地方氷河湖の変化
KH-4B(1969)からRADARSAT(2007)までを比較/幾何補正後、自動抽出/ルゲ湖の変化が明瞭/ルゲ湖のCORONA画像について、状況は把握できるが詳細な判読は難しい/HISやHue値(鮮やかさ)で抽出/マルチバンド衛星ではやはりNDWI,MIRなどがよりよい結果に/氷河湖周辺をある程度切り取ってからマッピングし、目視で修正するのがよい

岩田)オルソ精度について細かい修正箇所・ズレが出ないか?/山之口)DEMの出来具合による。

SARについて/閾値の決定が比較的容易/分解能10m(PALSAR)/湖では倒れ込みが少ない

岩田)大きな湖のヘリが除かれて小さくなる傾向が見られる/杉山)コヒーレンスが湖で低いのはなぜか?/山之口)水面は位相が様々だから/杉山)白くコヒーレンス小さい部分には何が見えるか?/山之口)46日間の氷の流動による変化。表面状態が少しずつ変わる/藤田)山の影響も角度によりありうる。

藤田)湖の方向は影響するか?/山之口)邪魔するものがなければ影響しない。

藤田)決壊前のルゲ光学画像だけで状況を復元できるか?/田殿)可能性はある。

総合討論

藤田)いまはASTER処理を一人でやっている。ICIMOD氷河湖台帳で作業を効率化しているが、手作業でどこまでやるかが問題。ASTERのアップデートととLandsatの検索を進めたい。

ICIMOD氷河湖台帳・経年変化調査対象の氷河湖を決定・使用衛星を選択

JERS-1:山之口/ASTER:藤田

藤田)Landsatについては?/田殿)すでに無料公開されているものを使用予定。1984以降のETMプロダクト。

藤田)担当を衛星で分けるか、エリアごとに分けるか?

田殿)モンデチューを優先する予定か?/藤田)そのとおり。

岩田)ICIMODの選んだ氷河湖は?/藤田)それらのALOS_DEMも秋フィールド期までには用意したい。

藤田)ALOS,ASTERの担当は良いが他衛星については未定。

岩田)CORONAデータについては注文すれば入手可能。雲の少ないフィルムを選ぶべき

岩田)中国側のインベントリーは?/藤田)ある。面積・コード番号はあるが座標の記載なし。出版の予定は不明。

奈良間)衛星からの氷河湖リスト作成については?/藤田)これから行なう予定。傾斜角10°の他に良い評価基準が今のところ無い。

岩田)4/18の会合でヤチヨによる1/5万地図完成の報告あり。

田殿)外部共有サーバ設置を予定。メーリングリストを組織中。

4月8日 総合討論

配布フローチャートについて説明(藤田)

氷河湖インベントリー/ICIMOD:位置座標にズレあり/佐藤(北大院生修論)によるもの:ブータン+ネパールの分布/蘭州の院生によるもの(博論):ヒマラヤ内,標高データあり/グーグルアース上での公開(坂井)/グーグルアースは画像と標高データのズレあり,マニュアル修正が面倒

湖面の抽出(昨日の印象ではマニュアル抽出が早そう)

ASTER_DEMで下流斜面角度について評価(〜夏)(藤田)/危険といわれる44の氷河湖を再評価

ALOS_DEMのプロダクト選定(田殿)

GLOFのトリガーとなりうる要因の検討(地形,不安定な氷河,パンシャープンなど)(岩田・小森・奈良間)

決壊後の湖についてどのような要素を持っているか(ダムの形,裂け目など)(岩田・坂井)

CORONAによる決壊前氷河湖のDEM復元

拡大履歴インベントリ(配布レジュメ参照)/ALOS:氷河湖トレースなどの担当は順次決める/Landsat:担当はシーンを探しながら順次決める/JERS-1:JOPS事前処理は田殿。SAR使用については保留/CORONA:70年代の拡大把握のため是非使いたい。内藤?+小森+衛星班

ブータンはインターネットが不安定なのでDVD送付などで衛星データを供給

プロセス班:現地に持参したい衛星データを要求されたし/例:上流部キャッチメントの様子,サイドモレーンと氷河の比高など

氷河・氷河湖相互作用:実データの解析前にモデルなどで思考実験をしてみるのがよい

<今後の予定>
4月中旬:ブータンDGM・JICA間においてRD(Record if Discussion)締結/プロジェクト発足
5月中旬〜:JSTから各班へ予算配分
6月:キックオフミーティング(資料参照)
7月:現地派遣(小森)
10月:モレーンのサンプリングなど現地偵察(檜垣・佐藤)
冬:現地にてシステム構築(衛星班)